テレビュー(Tele Vue) 天体用アイピース:イーソス(ETHOS)
イーソス(ETHOS)SX4.7mm
アル・ナグラー設計のアイピースと望遠鏡で名を築いてきたテレビュー社。こんどは、新設計アイピース「イーソス」を投入することで、さらなる一歩を踏みだします。設計コンセプトは現社長のデビット・ナグラーにより提起され、テレビューアイピースのアイデンティティともいえる「ハイコントラスト」、「快適なアイレリーフ」、「視野周辺までのシャープネス」をベースに、非点収差、像面湾曲、倍率の色収差、角倍率の歪曲等をたくみにコントロールし、昼間の観望でも瞳位置が過敏にならないようにしたことが、イーソスの新たな特徴。光学設計は、テレビュー社の光学設計者として長年活躍するポール・デレカイが、常に最新の技術を追求するテレビュー社のフィロソフィーを背にその基盤を築き、アル・ナグラー監修のもと、完成にいたりました。
シャープネスは光学設計で決まりますが、コントラストを極限まで高めるため、フラットに仕上げたバッフルをたくみに組み入れ、低反射率と高透過率をもたらすため、ガラス素材ごとに最適なコーティングを施しています。
2007年秋、テレビュー社は天文アマチュアの宇宙の見方を広げ、「100°のテレビュークオリティ」という新たな観望体験を提示します。イーソス13mmの絞環の面積は、かつて「ナグラーレボリューション」といわれたオリジナルの82°のナグラー13mmと比べても50%広くなります。焦点距離が長く見掛け視界の狭いアイピースの実視界と同じ実視界を、より高倍率で実現できるため、より暗い背景を享受できる多才なアイピースです。
すでに、米国各地でイーソスのデモンストレーションを行いましたが、思いもよらない広い視界とシャープネスの共存に、どこでも驚嘆の声が絶えません。テレビュー社の新しい設計コンセプトが認められたことを目の当たりにし、私たちの喜びもひとしおです。
見掛け視界100°、アイレリーフ15mm、平坦な像面、角倍率の歪曲と倍率の色収差が極少…などなど、イーソスには最先端のスペックと性能が備わっています。しかしながら、こうした利点を列挙しても、イーソスの素晴らしさを少しもお伝えできないもどかしさを覚えます。
星を見る光学系としての理想は、「宇宙」に対峙しながらも、光学系の介在を意識させないことです。たとえば、欠陥のある光学系で星をとらえても星は収差像そのものになってしまい、いやがうえでも光学系を強く意識することになります。ハイスペックで卓越した光学性能は、星を美しく見るためのひとつの前提条件。その条件をすべて備えたアイピースが「ナグラー」なら、「イーソス」はそれに加えて視角という壁を取り去った最初のアイピース。イーソスの向こうに展開するのは、これまでだれも体験したことのない、神秘的で臨場感あふれる生々しい宇宙です。
『イーソスを知らずに、対物の限界を決め付けるのはもったいない』と言った人もいましたが、逆に、使用する望遠鏡の性能がそのまま出てしまうのもイーソスのなせる業。良い意味でも悪い意味でも、望遠鏡の性能を見直すきっかけになるでしょう。
スペックのみをコピーしたイーソス類似品は将来登場するでしょうが、スペックだけで見え味が決まらないことは、これまで数々のナグラー類似品が証明してくれています。アイピースにかけた長い経験をベースに、星の美しさと感動を知っているテレビュー社だからこそ、はじめて具現化できたアイピース。それがイーソスです...テレビュー・ジャパン
イーソス13mm見掛け視界100°の潜在能力
プルーセル26mm(左)とイーソス13mm(右)が二重星団をとらえています。いずれも同じ広さの実視界ですが、イーソスの倍率係数は2倍、コントラスト係数は4倍です。たとえば、35センチ F4の望遠鏡でこの実視界0.9度を得るには、見掛け視界50°のプルーセル26mmは射出瞳径6.5mmで倍率が54倍ですが、見掛け視界100°のイーソスなら射出瞳径3.2mmで倍率が108倍。コントラストと、分解能と星数の差が一目瞭然です。
星野、散開星団、球状星団、星雲、銀河などのディープスカイ観望には、背景が真っ黒になるまで倍率を上げてはいけませんが、大気による分解能の劣化がないかぎり、その対象を囲むことのできる最も高い倍率を選んでください。射出瞳径が最小になることで背景がより暗くなり、一定の明るさで輝く恒星のコントラストが向上し、倍率が上がったことで広がりのある対象の詳細が浮き出てきます。見掛け視界の広いアイピースを活用することで、倍率に潜む力がより発揮されるわけです。
イーソス13mmの最大角倍率歪曲は視野全体のわずか1%
技術参考文献「アイピースの歪曲収差」 − Rutten
& Van Venrooij共著「Telescope
Optics(p169)」より...
"歪曲は広角アイピースでとりわけ重要な収差です。ただし、まずは直線歪曲と角倍率歪曲の区別を明確にしなければなりません。地上望遠鏡では、焦点面での直線がアイピースでも直線にみえることが必要です。直線歪曲をゼロにするには、次の関係が正立しなければなりません。
y
= f ・tan
β
「y」は焦点面の軸外しの距離、「β」は光軸からの像角度、「f」はアイピースの焦点距離です。
天体観測の場合、角倍率が視野全域で一定であることが重要です。たとえば、視野中心または周辺に関係なく、二重星の角距離は同じでなければならず、惑星の丸いかたちが変わらないようにしなければなりません。この場合、次の関係が成り立ちます。
y
= f
・β
「β」はラジアンで表されます。
角倍率の歪曲がゼロのときは焦点面の直線が糸巻型のように曲がって見え、その湾曲は中心から離れるほど大きくなります。アイピースの直線歪曲と角倍率歪曲の両方を同時に補正することは不可能です。
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左左は米国のスターパーティで使用した評価ボード。同じ倍率であることを前提に、一番外が見掛け視界100°のイーソスでとらえられた円、その内側が見掛け視界82°、68°、60°、50°のアイピースでとらえた円です。
十字線は、直線上の均等な点を背景に角倍率歪曲が補正されているかどうかを確認するため、小さな土星を5°間隔で並べたもの。土星のイラストを視野の中心と端に置き、コントラストと詳細(新聞の文字ドットくらいまで)を評価できるようになっています。 |
見掛視界 |
110°
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バレスサイズ |
2”、1 1/4
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焦点距離 |
4.7mm |
全長 |
167mm(2"バレル装着時:171mm) |
有効絞環径 |
8.94mm
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最大径(ゴムグリップ部) |
57mm |
アイレリーフ |
15mm ディオプトロクス対応
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重量 |
本体:520g(2"バレルアダプタ:+77g) |